06_株式会社山下工芸
職人の技と天然素材の温もりを感じて
竹細工、小石原焼、小鹿田焼
黒川、指宿、嬉野、雲仙…多くの温泉地がある九州ですが、なかでも〝おんせん県〞として知られるのが大分県。特に、別府温泉をはじめ、浜脇、 観海寺、堀田、明礬、鉄輪、柴石、亀川の8つの温泉地からなる「別府八湯」は、源泉数・湧出量日本一。まちを歩けば、もくもくと立ち上がる湯けむりとともに、特有の香りが楽しめます。
そんな別府を代表する伝統工芸品が「竹細工」。その歴史は古く、西暦 71年に即位した景行天皇の時代にまでさかのぼるといわれています。江戸時代には、日本一の温泉地として名が広がった別府。全国から訪れた湯治客が滞在中に台所用品やお風呂グッズを入れる竹でできたカゴなどを使用し、お土産品として持ち帰ったのだとか。その後も徒弟学校や指導所、研究所を設立するなど、竹細工の技術向上を目的に地域で取り組んできました。その結果、「別府竹細工」は1971年には当時の通産省から、伝統工芸品に指定されたのです。
古くから、竹細工が身近にあった別府。別府駅構内にある別府竹工芸とクラフトショップ「ICHIZA」では竹製品を中心に、天然素材の雑貨や伝統工芸品を扱い、観光客を中心ににぎわっています。実はここ、ICHIZAの親会社が「山下工芸」。別府に拠点を置き、竹細工や陶磁器、工芸品の仕入れや卸売り、販売を行う商社です。「私たちが扱うのは、天然素材の商品です。竹製品はもちろん、さまざまなジャンルの職人さんを発掘し、ときにはコラボしてオリジナル商品を生み出しています」と社長の山下謙一郎さん。ショールームに並んだ品々を前に、ひとつひとつのエピソードや職人さんの思いを教えてくれる姿からは、商品への思い入れが伝わってきます。
山下さんは、両親から山下工芸を継承しました。もとはお茶道具の卸業を専門に1975年にはじまった会社ですが、実は創業時より続くひとつの自社ブランドが存在しています。それが「takebito」。ラインアップには、職人の緻密な技術が光る竹製品が並びます。また、山下さんは放置竹林にも早くから着目。手入れされず問題になっている竹林から竹を仕入れて、製品開発に取り組んでいるのです。さらに梱包といった作業は大分県内20の福祉事業所に依頼。社会課題を解決しながら収益を上げるソーシャルビジネスにも力を入れています。
「今後は日本の伝統工芸をどんどん海外に発信していきたい」と、声を弾ませる山下さん。さらに「若い作り手も積極的に支援できたら」と、職人を育てる学校へ売り上げの寄付も考えているといいます。「海外の安価な製品ばかりになってしまうと、職人はさらに減ってしまいます。僕は芸術・文化を次世代につなげていきたい。だからこそ、伝統工芸品が日常でもっと気軽に使われるとうれしいですね」。
技を磨いてものづくりに挑む職人の思いを、商品とともに届けてくれる山下工芸。天然素材ならではの温かみある逸品を、暮らしのお供に加えてみてはいかがでしょう。
1_ 日本のみならず世界各国から集まった竹製品。
2_ 中国の職人が細いヒゴで編んだ竹をあしらった水筒は若者に人気新たに、竹をフレームに使った自転車を開発。海外での販売を目指しています。
3_ 九州ヴォイスでは竹細工のほか、山下工芸がおすすめする焼き物も販売。
4_ 飛び鉋と呼ばれる技法で入った模様が特徴の小石原焼の器は、和洋どちらの食卓にもぴったり。
5_ 山下工芸では、「天然素材」をテーマにさまざまなジャンルの商品を扱っています。
温泉地を見渡せる「湯けむり展望台」から望む別府のまちなみ。もくもくと立ち上がる湯けむりを見ることができます