ものづくり・商業・サービス生産性向上促進34社

34_ヤリヤ家具

職人たちの技が詰まった“旅するテーブル”

M ATILDA table

日本の家具五大産地のひとつ・福岡県大川市。ここで作られる大川家具は、室町時代後期の船大工にルーツがあるといわれ、今も日本最大の家具の 産地として知られています。大川を家具のまちとして発展させた立役者ともいえるのが、佐賀県との県境に流れる筑後川。かつては木材運搬のための海運ネットワークの拠点でした。そして船の積荷の受け渡し場所となったのが、大川・榎津地区の港。結果、大川には集まった船を修理するための船大工が増え、まちの木工業が発展し、今の大川家具へと繋がっているのです。

大川家具は、木材の仕入れや加工、組み立てなどを工程ごとに分業化して製造します。工程それぞれに専門の職人が携わるからこそ、高品質な家具を生み出すことができるのです。そんな大川の職人の力を借りて家具作りに取り組むのが、ヤリヤ家具店。お客さん一人一人の声を聞きながら作る特注家具は、くちこみで人気を集めています。

ヤリヤ家具店の鎗屋大輔さん(左)と井上企画社長の井上新二さん

福岡市に拠点があるヤリヤ家具店。お客さん一人一人の希望を汲み取り、オーダーメイドの家具をデザイン・販売しています。そんなヤリヤ家具店が2022年に新たに販売を始めたのが「MATILDA table(以下:マチルダテーブル)」です。マチルダテーブルのコンセプトは、「旅する家具」。テーブルは組み立て式で、畳めば片手で持てるコンパクトなサイズとなることから、気が向く場所へどこへでも連れ出すことができます。誕生のきっかけを店主の鎗屋大輔さんに尋ねると、「家族で野外フェスを楽しむために、趣味で作ったのがはじまりなんです」と教えてくれました。

木材は、大川市にある創業120年の材木店・井上企画から仕入れています。井上企画の木材は、大量生産を行うメーカーに向けて販売されるもの。しかし「木材の良さを広めてくれる小規模の作り手さんも大切にしたい」との思いで、一部小ロットでの販売にも対応しています。マチルダテーブルに使用されるホワイトオークは、硬くて丈夫。家具に加工すると長く使える一方、加工が難しいという作り手泣かせな一面があります。

しかし、マチルダテーブルは折り畳んだ天板の内側に、パーツを収納する仕組み。左右対称に木材を加工する必要があり、少しのズレも許されません。そんな木材の加工を担うのが、徳永エヌ・シー。NC工作機という機械で、部材加工を行う会社です。大川家具界隈でも、「加工で困ったら徳永エヌ・シーへ」と一目置かれる存在。設計図をもとに刃物の種類や回転数を決め、プログラミングを組み、NC工作機で木材を加工していきます。機械任せではなく、最後は人の手で0・1㎜単位の微調整を行う、高い技術と経験が必要な工程です。

職人たちの技術が凝縮されたマチルダテーブルを前に、「一人じゃないからこその大変さはもちろんある」と笑う鎗屋さん。「でもコミュニケーションを重ねることで生まれるアイデアもある。たくさんの気づきを与えてくれる相手との対話を大切に、もの作りをしていきたいですね」。

徳永エヌ・シーでの加工の様子。蝶番がぴったりとはまるようにと行う0.1ミリ単位の調整

設計図をもとに、試作を重ねて理想の加工に近付けます

折りたたまれた天板を開くと組み立てパーツがきっちりと収まっています

工具なしで1分もあれば組立完了!

2.9kgと女性が片手で持てる重さ

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