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23_有限会社このみ園

九州最古の茶商が贈る、伝統焙煎の高品質茶

八女焙炉式玉露・煎茶、八女焙炉式 玉露飴、八女 焙炉式 玉露せんべい など

日本のお茶の産地と聞いて、皆さんはどこを思い浮かべるでしょうか。静岡や京都・宇治のイメージがあるかもしれませんが、実は九州は日本有数 のお茶どころ。都道府県ごとにみる2021年度の栽培面積のランキングでは、2位に鹿児島県、5位に福岡県、6位に宮崎県、7位に熊本県と九州勢が並びます。そんな茶どころ・九州で、お茶好きに知られる産地のひとつが福岡県八女市です。八女茶のなかでも、特に玉露は高品質。全国茶品評会の玉露部門では22年連続、産地賞を受賞している名産地なのです。

そんな八女市にあるのが、九州最古の茶商「矢部屋許斐本家」。宝永年間(1704〜1711年)にはじまった地域の山産物を扱う問屋をルーツに持ち、慶応元年(1865年)に、茶の専門問屋を開業。明治期には、初代・久吉がこの地で作られる茶を見出し、「八女茶」と名付けました。以来、八女茶は日本有数の高級茶として国内外で愛されています。

矢部屋許斐本家があるのは、八女市の中心・福島のまち。江戸中期から、この地で茶商を営んできました。現在、店を仕切るのは、14代目、有限会社このみ園の許斐久吉さんです。

許斐さんの案内で、店の奥へ進むとふわりとお茶の爽やかな香りが。見れば、ひとりの男性が、台の上に広げた茶葉をざっざっと混ぜて手揉みしています。「これが八女茶の原点といわれる焙炉式焙煎法です」と許斐さん。和紙の上に茶葉を広げ、下から炭火の遠赤外線で茶を焙煎する手法です。江戸時代から続く八女茶の製造方法ですが、手間も時間もかかるうえ、技術も必要とあって、現在、八女で焙炉式焙煎法を採用する事業者はほとんどありません。焙炉台に貼られているのは、八女和紙。炭火によって、台の上は70〜80度ほどと、手でじっと触るのは難しいほどの熱さに温められています。そこへ5kgの茶葉を広げて焙煎をはじめるのですが、時間はその日の気温や湿度によって40分〜1時間以上とさまざま。仕上がりは職人の勘が頼りです。「焙煎を進めると茶葉がふわっと軽くなる。湿気がなくなって、山にしたときにすっと滑って崩れていくのが、焙煎完了の印ですね」と、焙煎を担当する職人さんが教えてくれました。

焙炉で仕上げた八女茶は、独特の香ばしい香りをまとっています。そして、驚くのがその味。「お茶ってこんなに甘くて、うま味があるんだ」。茶葉から生まれたその味はまるで出汁のようでもあり、玉露や煎茶と飲み比べが楽しめるのはワインやコーヒーのようでもあります。

 「日本茶というと茶道や煎茶道のイメージから、ハードルが高いと考える方もいることでしょう。しかし私は、先人の知恵として受け継いできた日本茶をもっと気楽に味わっていただきたい。かつて中国では、人々がくつろいで自由にお茶を楽しむ【茶館】がありました。現代の日本でも、そんな空間を作っていきたいですね」と許斐さん。目の前に広がる日本茶の新しい世界に感じた胸のときめき。皆さんも体感してみませんか。

 

1_ 焙炉台の下で燃える炭の火加減も重要

2_ 茶葉に直接触れる焙炉台の天板部分に貼られるのは、八女の伝統工芸品・手すき和紙

3_ 沸騰させた湯を50~60度に冷ましてお茶を入れると、渋味が少なくあま味とうま味が際立つ一杯に

4_ このみ園の八女茶は、銀座の洋菓子店「コロンバン」の焼き菓子にも使われています

5_14 代目の許斐久吉さん

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